コラム
株式会社の設立登記の流れ
1 はじめに
以前に比べて、会社設立のハードルは低くなりました。そのため、個人や小規模でも「会社を作りたい」「個人事業から会社としてスタートしたい」という方も増えているのではないでしょうか。
日本で設立できる会社形態としては「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類があります。その中で、日本において、大規模から小規模まで最も一般的な会社形態が「株式会社」です。今回は、「株式会社」を設立するにあたり、どのような流れで進めていくのかをご紹介します。
会社設立の概要や設立後において必ず手続きが必要となる役員変更登記についてのお話は、「会社の設立登記と役員変更登記」のコラムをご覧ください。
株式会社を設立する方法には、「発起設立」と「募集設立」があります。
発起設立とは、発起人のみが設立時の株式を引き受けることにより会社を設立する方法です。一方、募集設立とは、設立時の株式のうち、一部を発起人が引き受け、残りの株式を発起人以外の第三者から募集して会社を設立する方法です。一般的に、発起設立は、発起人だけで設立時の出資金をまかなえるような小規模な会社を設立する場合に適しています。一方で、募集設立は、発起人だけでは設立時の出資金をまかなえないような大規模な会社を設立する場合に適しています。
今回は、小規模な会社の設立方法として一般的な株式会社の「発起設立」により一人で会社を立ち上げる場合の流れを「富山司郎さん」の事例を交えながらご紹介します。
(富山司郎さん)「会社を立ち上げるぞ」
2 発起設立の流れ
(1)発起人の決定
まずは、発起人となる人を決定します。発起人とは、会社法上は「定款に発起人として署名または記名押印した者」をいいます。具体的には、設立の企画や設立に関する事務手続きを行う人です。また、発起設立の場合は、最初の株主になる人でもあります。
(富山司郎さん)「一人会社だし発起人も私がなろう」
(2)定款の作成
次に、定款を作成します。定款とは、会社の組織や活動を定める規則です。定款の記載事項には、「絶対的記載事項」、「相対的記載事項」、「任意的記載事項」があります。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならず、記載がなければ定款自体が無効となってしまう事項です。絶対的記載事項は、会社法で定められている下記の5つの事項です。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款に記載しなくても定款自体が無効にはならないですが、定款に記載しないと、その効力が認められないものです。相対的記載事項は、例えば、会社法で定められている下記の5つの事項などです。
- 現物出資に関する事項
- 財産の引受けに関する事項
- 発起人の報酬その他の特別の利益
- 設立費用
- 株式譲渡制限などの株式の内容に関する事項
任意的記載事項
任意的記載事項とは、定款に記載されていなくても効力に影響のない事項です。例えば、事業年度、役員の員数、株主総会の運営に関すること(株主総会の招集時期、招集権者、議長)などの事項があります。
(富山司郎さん)「定款を作成したぞ」
平成30年11月30日から、法人の透明性を高め、暴力団員等による法人の不正使用(マネーロンダリング、テロ資金供与等)を抑止するための措置として、定款の作成と同時に「実質的支配者となるべき者の申告書」も作成することになりました。詳しくは日本公証人連合会のサイトをご覧ください。
(3)定款の認証
定款を作成したら、その定款について公証人の認証を受ける必要があります。株式会社は、定款の認証を受けなければ、その定款の効力が生じません。
(富山司郎さん)「公証役場で定款の認証をしてきたぞ」
(4)発起人による出資金の振込もしくは入金(出資の履行)
発起人は、引き受ける株式分の金銭の全額(出資金)を、発起人名義の金融機関の口座に払い込みます。
(富山司郎さん)「出資金を自分(発起人)の口座に入金してきたぞ」
(5)設立登記に必要な書類の作成
発起人は、既に定款で定めている場合を除き、下記の事項を決定し、決定した書類を作成します。
発起人全員の同意で決定する事項(発起人の同意書の作成)
①発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
②発起人が設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
③設立後、出資金の一部を資本金としない場合、資本金及び資本準備金の額に関する事項
④設立する会社が種類株式発行会社の場合、定款で種類株式の内容の要綱を定めた場合のその具体的内容
⑤発行可能株式総数
(富山司郎さん)「①②⑤は定款に記載したし、③④は不要だから、同意書は不要だな」
発起人の過半数の一致で決定する事項(一例)(発起人の過半数の一致があったことを証明する書面の作成)
①設立時取締役、会社の機関設計に応じて、設立時会計参与、設立時監査役及び設立時会計監査人の選任
②本店の具体的な所在場所
③支店を置く場合、支店の具体的な所在場所
④株主名簿管理人を置く場合、株主名簿管理人の選任
⑤支配人を置く場合、支配人の選任
(富山司郎さん)「①は定款に設立時取締役を自分と記載したし、③④⑤は不要、②の本店の所在場所だけ決めよう」
その他の必要書類(一人会社の場合)
・払い込みがあったことを証する書面(出資金を入金した通帳のコピーと合綴)
・設立時取締役の就任承諾書
・設立時取締役の印鑑証明書
・印鑑届出書(会社の実印を登録するための書類)
(6)設立登記の申請
書類がすべて整ったら、本店所在地の法務局へ会社の設立登記を申請します。会社は、設立登記を申請した日が、法的に「会社」となった日になりますので、設立日を決めたい場合は、決めた日に申請する必要があります。
申請方法は、法務局へ持参してする申請、郵送による申請、オンライン申請があります。司法書士が申請する場合、現在はほぼオンライン申請で申請します。
(富山司郎さん)「法務局へ書類を提出して申請するぞ」
(7)登記の完了
これで、設立登記は完了です。登記完了後は、登記事項証明書と会社の印鑑証明書を取得します。登記事項証明書等は、設立後の金融機関での会社名義の口座作成等さまざまな手続きで必要となります。
(富山司郎さん)「登記が完了したぞ!株式会社●●●の活動がいよいよスタートだ!」
3 まとめ
今回は、一人会社の株式会社設立登記までの流れをご紹介しましたが、さまざまな会社の種類があり、その中でさらに定款の内容をある程度自由に決められるので、設立の登記と言ってもたくさんの方法があります。安易な設立登記申請は後々さまざまな問題が生じる可能性があります。
株式会社等法人の設立登記手続きについて、登記手続きの専門家である司法書士がアドバイスいたします。お気軽に下記の富山県司法書士会総合相談センター(無料相談)までご相談ください。
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