コラム

成年後見制度とは? 成年後見人等ができることは?

 成年後見制度とは?

 司法書士の仕事のひとつに「成年後見」があります。
 近年、高齢者を狙った特殊詐欺の被害が増えるなどにより、富山県司法書士会でも相談件数が増えてきました。
 大切なご家族の財産を守るだけではなく、ご自分の将来に備えるためにも、まずは正しく「成年後見制度」についてご理解いただくことをおすすめします!


 「成年後見制度」とは、認知症、知的障害、精神障害、発達障害等により判断能力が不十分な人を、法律面で保護及び支援する制度です。

成年後見制度の利用ケース

 まずは、成年後見制度を利用するケースの一例をご紹介します。

ケース1

介護施設に入る場合や介護サービスを受けるにあたり、本人が判断したり、必要な契約ができないとき、成年後見人等の支援を受けることで、必要な契約をし、費用の支払いをしていくことができます。

ケース2

高齢者を狙って高額で不要なものを売りつける悪徳商法との契約してしまったとき、成年後見人等に付与されている取消権によりその契約を取り消すことができます。

ケース3

父が亡くなり、母と子が遺産を相続するにあたって、母の判断能力が十分ではないために、遺産の分け方を決められないとき、母に代わって遺産を分ける話し合いをし、分け方を決めることができます。

ケース4

親が入院し、入院費の支払いのため、親の定期預金を解約しなければならないが、親の判断能力が不十分で解約ができないとき、親に代わって預貯金の管理ができます。

ケース5

父が施設の費用の支払いのため、本人の自宅を売却する必要があるとき、本人に代わって自宅を売却する手続きをします。ただし、自宅の売却は裁判所の許可を得る必要があります。

ケース6

身寄りがなく、将来認知症になった後のことや亡くなった後のことが心配なとき、元気なうちに信頼できる人と任意後見契約を結ぶことによって自分の希望に沿った支援を依頼できます。

成年後見人の仕事で勘違いされること

 成年後見人等は、本人の通院や買い物の付き添い、自宅の掃除等本人の世話をしてくれる人と思われる方がいますが、原則成年後見人等は直接付き添いや家事等のお世話をする立場ではありません。しかし、通院等に付き添ってもらうためのサービスの契約やホームヘルパー事業所等との訪問介護契約をすることによって本人のために付き添いや家事の支援をします。

判断能力とは?

 例えば、高額な物の購入やお金の貸し借りのように契約書があったり実印を押したりする重要な契約をする場合、自分がこの契約をすることによってどのような結果になるのかをある程度判断できる能力が必要となります。このような能力を判断能力といいます。

 判断能力が不十分な場合、重要な契約をするときに不利益を被ってしまうおそれがあります。

判断能力が不十分な人とは?

 判断能力が不十分な人とは、精神上の障害を有する人、すなわち、認知症、知的障害、精神障害、発達障害等を有している人を対象とし、精神上の障害を伴わない身体上の障害を有する人は対象となりません。

 成年後見制度の種類

 成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度があります。

法定後見制度とは?

 法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な人のために、親族等が家庭裁判所へ後見等開始の申立をして、成年後見人等が選任され、審判が確定すると本人のために法律面での支援ができる制度です。

 法定後見制度には、判断能力の欠く状態の程度によって、後見、保佐、補助の3つの種類があります。

後見とは?

 後見は、成年後見人に全面的な代理権が与えられ、本人の代わりに契約をしたり財産の管理をしたりして支援を行います。支援される対象者は、例えば①日常の買い物をすることも不安で、誰かに代わってやってもらう必要がある人、②家族の名前、自分の居場所等、日常的な事柄が分からなくなっている人、③遷延(せんえん)性意識障害の状態(いわゆる植物状態)の人などが対象になると考えられます。

保佐とは?

 保佐は、財産の管理や契約の締結などは本人が行い、その本人の行為について同意をしたり、必要なときには取り消しをするという方法で支援を行います。また、保佐人に代理権を与えて財産管理などをしてもらうこともできます。保佐人に与えられる代理権は、成年後見人のような広範囲なものではありません。支援される対象者は、例えば①日常の買い物程度は自分でできるが、重要な財産行為は自分で適切に行うことが困難な人、②ある事柄はよく分かるが他のことは全く分からない、③日によって認知症の症状等の出る、いわゆる「まだら認知症」の重度の人などが対象になると考えられます。

補助とは?

 補助は、保佐と同様、補助人が本人の行為について同意をしたり、取り消しをしたり、代理権を使ったりして本人支援を行いますが、補助人の同意や代理の範囲は、保佐より狭くなります。支援される対象者は、例えば「まだら認知症」の軽度の人などが対象となっています。

任意後見制度とは?

 任意後見制度は、今は元気で判断能力もあるが、将来、判断能力が不十分になった時に備えておくため、任意後見契約を結んでおく制度です。

任意後見契約とは?

 任意後見制度を利用するためには、任意後見人との間で任意後見契約を結びます。契約をするためには、まず任意後見人になってもらう人との間で、生活面や病院・施設の利用や財産の管理の面でどんな支援をしてもらうか、その報酬をいくら支払うかなどを決め、公証人役場で公証人に公正証書という形で契約書を作ってもらいます。 ただし、これだけでは任意後見契約は始まっていません。実際に判断能力に衰えが出てから、任意後見契約の内容に従った支援が始まります。

 司法書士と成年後見制度

 司法書士は、法律の専門家として判断能力が不十分な方が安心して日常生活を送ることを支援する成年後見制度に取り組んでいます。また、成年後見制度を支援するため、全国の司法書士で組織する公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが各都道府県に設置されています。

 司法書士の具体的なかかわり方としては、成年後見制度を利用するための後見開始申立書等の作成などを行います。また、司法書士自ら成年後見人となる場合もあります。

参考)成年後見制度利用の流れ
参考)成年後見制度利用の流れ

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートとは?

 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートは、成年後見制度を担う司法書士の団体です。家庭裁判所から選任される親族以外の第三者後見人の中では一番選任数が多く、成年後見業務の実績が豊富です。会員の司法書士は、充実した研修により、法律だけでなく、医療・介護・福祉分野等の研修を受け、法律と福祉の両方の知識や経験を積み研鑽しています。

 また、法定後見や任意後見等複雑な後見制度の利用についての相談や支援ができます。成年後見等開始申立書類の作成においても、申立書類の作成方法を熟知しています。

  • 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート(https://legal-support.or.jp/)
  •  まとめ

     成年後見制度は、判断能力が衰えたからといって、必ず利用しなくてはならないものではない反面、親族との関係や経済的な理由により、本来利用すべき状態であるにも関わらず利用されていない場合もあります。また、成年後見制度の利用を検討するときは、単純に利用できるかどうかだけではなく、本人や本人の周辺の方々との関わり方などさまざまなことを検討する必要があります。

     成年後見制度のことについて、もっと具体的な内容を知りたい、メリット・デメリットなどを聞いてみたい、など成年後見制度について気になる方は、下記の富山県司法書士会総合相談センター(無料相談)までご相談ください。

    富山県司法書士会総合相談センター

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